2025年12月22日
目次
◎廃油とは?産業廃油の定義と分類
◆特別管理産業廃棄物に該当する廃油|引火性と有害物質で判定
▼引火性廃油
▼有害物質を含む廃油
◎廃油の主な排出源
◆製造業全般|潤滑油・切削油・洗浄溶剤が発生
◆自動車整備・関連産業|エンジンオイル交換が主な発生源
◆輸送・運輸業|車両・船舶・航空機の定期メンテナンス
◆電力・エネルギー産業|変圧器の絶縁油やタービン油
◆石油精製・基地|タンクスラッジや酸洗ピッチ
◎廃油を規制する法律
◆廃棄物処理法|適正処理とマニフェスト制度の義務化
◆水質汚濁防止法・下水道法|河川や下水への流出を禁止
◆消防法|引火点に応じた危険物規制
◆その他関連法|PCB特措法や土壌汚染対策法など
◎廃油の処理方法
◆燃料化|水分・不純物を除去し再生重油に精製
◆潤滑油・化学原料への再精製|蒸留と水素化処理で基油を回収
◆焼却処理|有機物を分解し量を大幅削減
◆中和・無害化処理|酸性スラッジや乳化廃油を化学処理
▼酸性スラッジの中和
▼乳化廃油の破乳(脱乳化)
▼高度分解技術
◎廃油処理の違反事例
◆金属加工工場による廃油の河川投棄(埼玉県川越市/2022年)
◆朝市での不適正処理(大阪府大東市/2024年)
◆飲食店による路上投棄(東京都新宿区/2024年)
◆違反の背景・原因|コストの問題と知識不足
◎廃油の収集・保管と安全対策
◆保管方法の基本ルール|密閉・表示・火気厳禁・漏洩防止
◆安全管理と法令遵守|危険物管理と産廃管理の両立が肝心
◎アメロイドの廃油処理製品
◆深層ろ過方式(CJCフィルタ)
◆遠心分離方式(アメロイドセパレータ AS型)
◆アメロイド独自の除水方式(遠心ドライ装置 MJ型)
◎製品導入までの流れとサポート体制
◎廃油処理に関するご相談はアメロイドにお問い合わせください
◎廃油処理に関するよくある質問
◆産業廃棄物としての「廃油」とは何ですか?
◆産業廃棄物の廃油にはどんな種類や例がありますか?
◆飲食店から出る使用済み油は産業廃棄物に該当しますか?
◆アルコールなどの廃溶剤も廃油として扱われますか?
◆廃油の処理方法にはどのようなものがありますか?
◆産業廃油はどのように処分すればよいですか?
◆廃油処理を業者に委託するときの手続きや注意点はありますか?
◆廃油処理には産業廃棄物管理票(マニフェスト)が必要ですか?
◆無許可の業者に廃油処理を依頼するとどうなりますか?
◆事業所で出た廃油を家庭ごみと一緒に処分できますか?
◆廃油を下水や排水口に流してもよいですか?
◆廃油を自社で焼却処理したり地面に埋めたりしてもいいですか?
◆廃油を保管する際の法規制や基準は何ですか?
◆廃油の保管期間や保管できる量に制限はありますか?
◆廃油の保管場所にはどんな表示が必要ですか?
◆廃油の処理費用の相場はいくらですか?
◆油分を含んだウエスやフィルタなどはどう処分すればいいですか?
◆異なる種類の廃油を混ぜて保管・処理しても大丈夫ですか?
◆廃油の保管容器はどのようなものを使用すべきですか?
◆廃油処理を委託する業者はどのように選べばよいですか?
産業廃油(さんぎょうはいゆ)は、工場や事業所、車両などの事業活動に伴って生じる使用済みの油の総称です。エンジンオイルや機械油、植物性の食用油まで多様な油が該当し、適切に処理しなければ環境汚染や火災など深刻なリスクを引き起こします。
本記事では、産業廃油について技術・法律・環境・経済の観点から包括的に解説します。
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廃油とは?産業廃油の定義と分類

産業廃油とは、事業活動の結果として発生した使用済みの油全般を指します。日本の廃棄物処理法では産業廃棄物の一種として規定されており、その範囲は非常に広範です。具体的な分類は、油の由来や性質によって以下のように分けられます。
| 鉱物性油 | 原油を精製して得られる鉱物油ベースの使用済み油。例としてエンジンオイル、機械の潤滑油、油圧作動油など |
|---|---|
| 動植物性油脂 | 動物や植物由来の油。例として食品工場や飲食店から出る使用済み食用油(天ぷら油、ラード等) |
| 潤滑油系廃油 | 機械類の潤滑に使用された後の油。エンジンオイル、ギアオイル、タービン油などが含まれます |
| 絶縁油系廃油 | 変圧器やコンデンサに使われる絶縁油(電気絶縁用の油)の使用済み。PCBを含む絶縁油もここに該当します |
| 洗浄油系廃油 | 部品や製品の洗浄に用いた後の油性溶剤。例えばパーツクリーナーや有機溶剤の使用済み液など |
| 切削油系廃油 | 工作機械で金属を切削・加工する際に使われたクーラントや切削油の使用済み。水溶性切削油・不水溶性切削油の両方が含まれます |
| 廃溶剤類 | 塗料の希釈や洗浄に使ったシンナー等の有機溶剤の廃液(油状のもの) |
| タールピッチ類 | 石油精製副産物のタールやアスファルトなど、常温で固形状を呈するピッチ質廃棄物。 |
産業廃油には用途や性質ごとに様々な種類が存在します。また、「鉱物性」「動植物性」といった油の起源による区分と、「潤滑油系」「洗浄油系」等の用途・使用目的による区分の両面で分類できます。
特別管理産業廃棄物に該当する廃油|引火性と有害物質で判定
産業廃油の中でも、危険性が高いものは「特別管理産業廃棄物」として通常の産業廃油以上に厳格な基準で扱う必要があります。
例えば、収集運搬や保管にも都道府県知事の許可を要し、容器や表示のルール、処理基準も一段と厳しいものとなります。「特管」と「普通」の廃油を混ぜてしまうと全体が特管扱いとなるため、発生段階から注意深く分別することが肝要です。
特別管理産業廃棄物に該当する廃油には以下があります。
引火性廃油
ガソリンやシンナー等、引火点が70℃未満と非常に燃えやすい廃油は特別管理産業廃棄物に指定されます。例えば自動車整備で発生する使用済みガソリンや、揮発性の高い有機溶剤の廃液などです。消防法上も第4類危険物(第1石油類・第2石油類)に該当し、厳しい保管基準があります。
有害物質を含む廃油
PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含有する廃絶縁油や、特定有害な有機塩素系化合物を含む廃油も特別管理産業廃棄物です。これらは微量でも人体・環境への影響が深刻なため、専用の処理施設で無害化処理しなければなりません。
廃油の主な排出源

産業廃油の排出源は多岐にわたります。日本全体の廃油排出量は年間約300万トン規模にのぼり、その約4~5割が再生利用、残りは焼却等で減量化されています。特に化学工業や機械製造業からの排出が多い一方、自動車整備工場・ガソリンスタンドといった身近な現場からも大量の廃油が日々出ています。
産業廃油はあらゆる産業分野から排出されますが、特に以下のような業種・現場で多く発生します。
製造業全般|潤滑油・切削油・洗浄溶剤が発生
機械設備を稼働させる製造工場では、潤滑油や油圧作動油、切削油、洗浄用溶剤など様々な油を使用するため、大量の廃油が発生します。
特に化学工業・プラスチック・ゴム製品製造業が廃油排出量でトップで、2018年度は約88万トンに及びました。次いで機械器具製造業が約61万トン、鉄鋼・非鉄金属・金属製品製造業が約47万トンと続きます。製造業全体で見ると、加工油や潤滑油、洗浄用溶剤の廃油が多くを占めます。
自動車整備・関連産業|エンジンオイル交換が主な発生源
自動車やオートバイのエンジンオイル交換、ミッションオイルやギアオイルの交換作業から大量の廃油が出ます。自動車整備工場では主に鉱物性油(エンジンオイル等)と揮発油(使用済みガソリンなど)が排出されます。使用済みエンジンオイルはリサイクル需要が高く、再生重油へのリサイクル工程に回されます。一方、抜き取ったガソリンやシンナー等は引火性が高いため特別管理産廃として専門業者に処理委託されます。
なお、自動車「関連産業」としては、車両製造工場からの切削油や洗浄油も含まれ、2018年度の自動車関連産業全体の廃油排出量は約34万トンと推計されています。
輸送・運輸業|車両・船舶・航空機の定期メンテナンス
トラックやバスなど運輸業の車両メンテナンスではエンジンオイル交換が定期的に行われ、整備拠点ごとに廃油が出ます。また船舶からもエンジンの潤滑油(シリンダー油など)や燃料タンク清掃時の残油、ビルジ(船底残油)等が排出されます。これら船舶由来の廃油は「MARPOL条約」に基づき港湾で受け入れ処理される仕組みがあります。
鉄道車両や航空機も定期的なオイル交換があるため、鉄道会社や航空整備会社から使用済みオイルが発生します。ただし量的には自動車整備に比べ少なめです。
電力・エネルギー産業|変圧器の絶縁油やタービン油
発電所や変電所では変圧器に絶縁油が使われており、定期的な交換・抜油時に廃油が生じます。また火力発電所のタービン油、建設機械の油圧作動油なども含まれます。電力会社など公共インフラ系事業体はこうした廃油を「公共事業体の廃油」としてまとめて扱うことがあります。
とりわけ変圧器油はPCBを含むものが過去に使われていたため、特別管理産廃として無害化処理を進めている例もあります。
石油精製・基地|タンクスラッジや酸洗ピッチ
石油製品を扱うタンクやパイプラインの洗浄過程でタンクスラッジ(残油泥)や酸洗ピッチ(硫酸で洗浄した後の廃酸混じりの油泥)が発生します。これらも広義の廃油に含まれ、石油基地や製油所から排出される特殊な廃油と言えます。タンク清掃業者などが専門的に処理します。
廃油を規制する法律
日本では法律体系により、廃油の適正処理と環境保全を図っています。違反すると行政指導や営業停止命令、罰金刑だけでなく、社会的信用の喪失という重大なリスクも伴います。「知らなかった」では済まされないため、事業者は日頃から法令を遵守し、社員教育やマニュアル整備によって事故防止に努めることが求められます。
産業廃油の管理に関して複数の法律が関わっています。主な法律とその概要は次のとおりです。
廃棄物処理法|適正処理とマニフェスト制度の義務化
産業廃棄物としての廃油の適正処理を定める基本法令です。廃油を排出する事業者(排出事業者)は、自ら法令基準に従い処理するか、許可を受けた産業廃棄物処理業者(収集運搬・中間処理・最終処分業者)に委託する義務があります。
無許可の業者に渡したり、みだりに焼却・投棄すれば法律違反となり、法人には最大3億円以下の罰金刑等の重い罰則が科され得ます。また産業廃棄物にはマニフェスト制度(管理票による追跡管理)が義務付けられ、排出から処分まで適正に行われたか確認する仕組みがあります。
水質汚濁防止法・下水道法|河川や下水への流出を禁止
使用済み油を下水や河川に流出させることを禁じています。例えば厨房から廃食用油を流すと、水環境を汚染し下水処理場にも負荷を与えるため違法です。大量の油を排水に流せば水質汚濁防止法違反となり、企業に罰則や行政処分が科されます。
消防法|引火点に応じた危険物規制
廃油は新品の油と同様、その引火点に応じて危険物に該当します。一般的な使用済み潤滑油は第4類第2石油類(引火点21~70℃)に区分されることが多く、ガソリン等は第1石油類です。危険物に該当する廃油を一定量以上保管する場合、所轄消防署への届出や専用の貯蔵施設が必要です。
例えば引火性の廃油は指定数量200リットル(第1石油類の場合)、耐火性の倉庫や防油堤、消火設備の設置など厳格な基準が適用されます。運搬時も危険物表示をした容器・車両を用いる義務があり、多量輸送時は「危」マーク表示や許可が必要です。
その他関連法|PCB特措法や土壌汚染対策法など
PCB廃棄物の特別措置法(PCBを含む廃油は2027年3月までの無害化処理期限あり)、土壌汚染対策法(油漏れで土壌汚染が発生した場合の指定と措置義務)、大気汚染防止法(焼却炉のばい煙規制)なども関係します。
またリサイクル促進の観点では、資源有効利用促進法に基づき事業系の廃食用油をバイオ燃料などに有効活用する取り組みもなされています。自治体によっては、飲食店に対し廃食油の回収促進条例などを設けている例もあります。
廃油の処理方法

産業廃油の処理方法は大きく分けて「再生利用(リサイクル)」と「減量化・無害化」、そして最終的な「埋立処分」があります。再生利用率は、資源循環やカーボンニュートラルの観点から今後さらなる向上が期待されています。
ここでは代表的な廃油処理法として、燃料化、再生精製(潤滑油等への再生)、焼却処理、中和・無害化処理の技術について具体的に見ていきます。
燃料化|水分・不純物を除去し再生重油に精製
比較的汚染の少ない廃油は、燃料に再生するのが一般的なリサイクル方法です。回収された廃油から水分や不純物を取り除き、ボイラーや工業炉で使える燃料油に仕上げます。
廃油保管タンクから加温タンクへ送り、水分除去装置で蒸発分離します。その後スクリーンや遠心分離機(高速回転)で固形のゴミ・スラッジを段階的に除去し、最終的に再生燃料油タンクに良質な重油が貯留されます。分離除去された水分や汚泥・スラッジは焼却施設で処理され、灰は埋立されます。このように物理的な分離・精製を行って製品化されたものが「再生重油」と呼ばれる燃料油です。
再生重油の品質はJIS規格(K
2170)に準拠した規格が定められており、適合品は製鉄所の加熱炉やセメント工場のキルン、焼却炉の補助燃料などに販売・利用されます。例えば粘度や発熱量を調整したA重油相当品やC重油相当品として流通します。また規格外のものでも、工場の自家ボイラーで焼却補助燃料として使われるケースもあります。
燃料化のメリットは新規の化石燃料の代替となり資源節約・CO2削減に寄与する点です。一方でデメリットとして、燃焼時にCO2や若干の大気汚染物質が出ること、また塩素分など不純物が多いと燃焼設備を腐食させる可能性があるため前処理が重要です。現在、日本では廃潤滑油の約42%が燃料に再生されています。
潤滑油・化学原料への再精製|蒸留と水素化処理で基油を回収
廃油を元の製品に再生精製する取り組みも進んでいます。代表例が使用済み潤滑油の再生です。エンジンオイルなど使い終わった潤滑油を高度に精製し直すことで、新品に近いベースオイル(基油)を取り出し、再び潤滑油として利用できます。
再精製のプロセスは、新油製造のミニチュア版のようなものです。典型的には以下の工程を経ます。
- 1. 前処理(脱水・脱軽質分)
廃油を加熱し、まず水分やガソリン分など軽質成分を蒸発させて除去します。 - 2. 減圧蒸留
真空下で高温蒸留を行い、潤滑油成分を留出させます。揮発しない添加剤分解物や重質残渣は別途回収します。 - 3. 精製(触媒精製・水素化処理)
得られた留分に水素化精製(ハイドロトリートメント)などを施し、色や臭いの元となる不純物や劣化物質(酸化物質、スラッジ生成物など)を除去します。高度な設備では触媒を用いて硫黄分や塩素分も取り除きます。 - 4. 調合
精製された基油に、新たに添加剤を加えて所定の粘度・性能の潤滑油として仕上げます。
このようにして作られた再生潤滑油は、自動車用や工業用のオイルとして十分使用可能な品質を持ちます。例えば国内大手処理業者のダイセキ社は劣化した切削油やギヤー油を再生処理し、顧客に新品同様の油を返却するサービスを行っています。これは資源の有効利用と廃棄物削減の好例です。
潤滑油再生のメリットは資源循環と環境負荷低減にあります。潤滑油1リットルを製油所で新規に作るには原油が必要ですが、廃油から再生すればその分原油消費と精製時のエネルギーを削減できます。
ただし再精製プラントの建設・運転にはコストがかかり、十分な廃油量の確保や採算性が課題です。日本では潤滑油廃油の相当量が燃料利用に回っている現状もあり、再生油への転換には政策的後押しが必要との指摘があります。EUのように税制優遇や義務化がなければ、自然には進みにくい部分です。
なお、廃油の別原料化として化学工業原料への再生も注目されています。例として廃食用油からの石鹸原料があります。使用済み食用油に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を反応させると脂肪酸ナトリウム=石鹸が生成します。廃油石鹸づくりは古くから家庭レベルでも行われてきました。
また廃食油をメタノールと触媒でエステル交換して脂肪酸メチルエステルに変えると、それがバイオディーゼル(BDF)燃料になります。このように化学的変換で新たな価値を持つ製品に生まれ変わらせる道もあります。
焼却処理|有機物を分解し量を大幅削減
再生利用が困難または不要な廃油は、焼却による減量・無害化処理が行われます。廃油の主成分は炭化水素で可燃性ですので、適切な焼却炉で燃やすことで有機物を二酸化炭素と水に分解し、量を大幅に減らせます。
日本では産業廃棄物最終処分として埋立をする場合、基本的に液状のままの埋立は不可が原則です。廃油も例外ではなく、直接埋立は不可で必ず一度燃やしてからとなります。廃油焼却には専用の焼却炉が用いられます。
燃焼により発生する燃え殻やスラグは油成分が無機物に転換したものです。これらは有害成分が基準以下であれば安定型や管理型の最終処分場に埋め立てられます。燃焼過程で発生する排ガスについては、大気汚染防止法の規制があり、ばいじん濃度やHCl等について基準を満たすため集塵装置・洗煙装置を備えています。
焼却のメリットは廃油中の病原性・毒性物質を分解できる点です。例えばPCB汚染油は高温焼却で無害化できますし、動物油由来で稀に懸念される細菌・ウイルスも燃やせば死滅します。また量を数%程度まで減らせるため埋立容量の節約になります。一方デメリットは燃やすことでCO2が発生する点ですが、これは廃油を埋立て自然分解する場合と比べてもやむを得ない処理とも言えます。可能なら熱回収(サーマルリサイクル)を行い、焼却熱で蒸気や発電に利用することが望ましいでしょう。
中和・無害化処理|酸性スラッジや乳化廃油を化学処理
一部の廃油は特殊な処理が必要です。例えば強酸や強アルカリが混入した廃油や、重金属を含む廃油などです。こうしたものは化学的に中和処理や安定化処理を施してから処分します。
酸性スラッジの中和
石油精製の副産物である硫酸ピッチ(廃硫酸タール)は酸性が極めて強く腐食性があるため、そのままでは処理困難です。そこで石灰やソーダ灰を混ぜて中和し、pHを中性付近に調整してから焼却・埋立します。同様にpH2未満の強酸性廃液やpH12.5超の強アルカリ廃液も中和工程が必要で、専門業者が炭酸ガスや中和剤で無害化しています。
乳化廃油の破乳(脱乳化)
水と油がエマルジョン状に混ざった乳化廃油(例:水溶性切削油の廃液など)は、そのままでは油水分離が難しいため、凝集剤や脱水剤を加えて油層と水層に分離させる処理が行われます。分離後の油は燃料化、水は下水放流基準まで浄化するという形です。
高度分解技術
近年、触媒酸化や超臨界水酸化など化学的に油分を分解する技術も研究されています。しかし大規模実用化は限定的で、現状では焼却処理が主流です。なお土壌に漏れた油汚染については、土壌を掘削除去して焼却または微生物分解(バイオレメディエーション)で浄化するといった方法が取られます。
このように廃油はその種類・性状に応じて様々な処理技術が組み合わされています。適切な前処理と組み合わせることで、可能な限り資源として有効利用し、残余は安全に無害化するというのが理想の形です。
廃油処理の違反事例

産業廃棄物の不法投棄は毎年100件前後発生しており、廃油の違法処理もあとを絶たない状況です。
以下では、2020年以降に報告・摘発された主な廃油処理の違反事例を紹介します。
金属加工工場による廃油の河川投棄(埼玉県川越市/2022年)
2021年11月、埼玉県川越市の自動車部品金属加工会社の工場において、約660リットルもの廃油(金属製品の洗浄に使った溶剤含み)を工場の排水口から河川に流出させる違法投棄事件が起きました。
2022年8月、埼玉県警は同社代表取締役(当時62歳)を廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕し、男は「早く工場を売却したくて(処理に困った廃油を)流した」と犯行を認めました。廃油中のジクロロメタンは中枢神経を麻痺させ肝機能障害を引き起こす恐れがあり、周辺環境への影響が懸念されました。
発覚の契機は河川の異常(水質汚染)であり、行政が水質モニタリングを通じて違法排出を暴いたケースです。埼玉県は緊急措置として活性炭を用いた排水防止策を講じ、幸い健康被害は確認されませんでした。本件では法人と経営者個人が立件され、環境汚染の重大性から厳正な処分が求められる事例となりました。
朝市での不適正処理(大阪府大東市/2024年)
大阪府大東市で中国系住民らによって日曜早朝に開催されている人気イベント「中国朝市」でも、廃油の不適正処理が摘発されました。2024年5月、市内の朝市会場で揚げ物調理に使用した油を含む汚水がそのまま路上の排水溝に流されているとの通報があり、警察と市が調査を開始しました。
調べにより、朝市の食品販売店の従業員である中国籍の男性2名が、揚げ物用フライヤーを店先の歩道上で洗浄する際に廃油混じりの残液をそのまま流出させていた疑いが明らかになりました。大阪府警は2025年5月、これら従業員2名および朝市の運営会社を廃棄物処理法違反(投棄禁止)容疑で書類送検し、公表しました。
本件は地域住民の通報と行政の監視強化によって発覚したもので、運営会社も含め責任が問われた点が特徴です。廃油を下水に流す行為は悪臭や水質汚濁の原因となり環境犯罪として重く扱われます。
飲食店による路上投棄(東京都新宿区/2024年)
小規模な飲食店でも不適正処理が問題化しています。2024年10月、東京・新宿区歌舞伎町で居酒屋を営む外国人経営者ら3名が、店舗から出た使用済みの揚げ油を入れた一斗缶や不要になった電子レンジ等をビル前路上に放置・投棄した容疑で書類送検されました。
近隣ビル所有者から「見覚えのない生ごみや油缶が散乱している」と警察に相談があり、警察が任意調査したところ、経営者らが店の廃油入り容器を深夜に路上へ置き去りにしていたことが判明したものです。容疑者らは「知人に『捨てておけば大丈夫』と言われた」と供述し違法性を認識していなかった節もあり、容疑を認めています。
違反の背景・原因|コストの問題と知識不足
産業廃棄物としての廃油を適正に処理するには、専門業者への委託費用、人件費、時間、専用設備など様々なコストがかかります。違法行為に及ぶ事業者・個人の最大の動機は、この処分コストを節約したいという経済的理由です。実際、日本で発生する産業廃棄物の不法投棄はその多くで「コスト削減」が絡んでいるとされます。
さらに、「捕まらないだろう」という安易さやモラルの欠如も原因の一つです。不法投棄は山林や夜間など人目につかない状況で行われることが多く、摘発リスクの低さが違反を誘発します。特に組織ぐるみで隠蔽する悪質業者は、巧妙に場所や時間を選んで投棄するため発覚が遅れがちです。
総じて、①処理費用負担への抵抗、②適正処理ルートの未整備・周知不足、③摘発のリスク認識の低さ、③悪質な処理業者の介在といった要因が複合的に絡み、廃油の違法処理が発生しています。
廃油の収集・保管と安全対策

廃油を適切に処理するには、排出現場での保管から収集運搬に至るプロセスで安全管理を徹底する必要があります。不適切な取り扱いは漏洩・火災といった事故や、法規違反につながります。ここでは廃油の保管・移送に関する実務上のポイントと安全対策を説明します。
保管方法の基本ルール|密閉・表示・火気厳禁・漏洩防止
事業所で廃油を一時保管する際には、以下のような基本ルールを守ることが求められます。
- ● 密閉容器に入れる
廃油はフタのできるドラム缶やポリ容器等に入れ、こぼれたり揮発成分が飛ばないよう密閉します。開放タンクに貯めっぱなしは揮発や臭気の原因となりNGです。 - ● 容器に表示をする
「廃油」と内容物が分かるよう容器に明示し、混入・誤用を防ぎます。特に複数の種類の油を出す現場ではラベル管理が重要です。動植物油と鉱物油、塩素系切削油と非塩素系など種類ごとに分けて保管しないとリサイクルが難しくなります。 - ● 火気厳禁・換気
保管場所では火気を遠ざけるのが鉄則です。引火性の蒸気が滞留しないよう換気し、静電気火花にも注意します。電灯も防爆仕様にすることが望ましいです。 - ● 転倒・漏洩防止
容器はしっかり蓋を閉め、倒れないようバンドで固定したり堤防枠の中に置きます。万一漏れても床の側溝や土壌に流出しないようオイルパンやシートを敷くと安心です。 - ● 指定数量超の届出
前述のように、一定量以上を貯蔵する場合は消防法上の届出または貯蔵所許可が必要です。例えば第2石油類(エンジン廃油等)なら1000リットル超で倉庫等の構造基準が適用されます。事業所で大量に廃油が出る場合は、事前に消防署と相談し適法な設備(屋外タンク貯蔵所など)を設けましょう。
こうした保管上の注意は、実際には「新品の油」を管理する場合とほぼ共通です。ただ廃油の場合、混ぜるな危険のケースが多い点に特に注意です。例えば水と油を混ぜてしまうと処理が面倒になりますし、酸と油が接触すると発火の危険もあります。作業現場では専用の回収容器を用意し、他のゴミ等と混ざらないよう教育徹底が必要です。
安全管理と法令遵守|危険物管理と産廃管理の両立が肝心
廃油の保管・運搬には上記のような注意点がありますが、根底にあるのは「危険物かつ産業廃棄物である」という二面性です。したがって消防法の安全管理(火災・爆発防止)と廃棄物処理法の適正処理(無許可渡し禁止等)の両方を守る必要があります。
違反すると、例えば消防から是正命令や操業停止、廃棄物行政から罰金刑などが科される可能性があります。実際に過去には、無許可で廃油を溜め込んで火災を起こし、事業者が刑事責任を問われた例もあります。リスクを低減するため、定期点検(容器の腐食・漏れチェック、量の確認)、社内ルール(廃油管理の手順書作成)、緊急時マニュアル(こぼしたときの対応手順)を整備しておくことが望ましいでしょう。
特に中小企業や工場では、「ずっとドラム缶に入れっぱなし」「何の油か不明な液体が混在」という状況が起きがちです。そうした状態は見えないリスクをはらんでいます。専門業者に早めに相談し、計画的に回収処理してもらうことも大切です。
まとめると、廃油の扱いは「危険物管理」と「産廃管理」の両立が肝心です。安全第一で火災・漏洩を防ぎつつ、適法に処理ルートへ乗せることが求められます。
アメロイドの廃油処理製品

潤滑油や作動油などの産業用油は有限な資源であり、使用後に廃油として廃棄せず使い続けることが環境面・経済面でますます重要になっています。機械設備の油が汚れると故障や性能低下の原因となり、頻繁な油交換や廃油処理コストが発生します。
アメロイドでは、油中の微粒子や水分、スラッジを除去して油を浄化する専門的な装置を開発・提供しています。アメロイドは創業以来60年以上にわたり液体浄化技術ひと筋に取り組み、世界最高水準の「油をきれいにする技術」を追求しており、その製品群は工作機械や発電設備、船舶など幅広い分野で採用されています。
以下では、代表的な3つの廃油処理ソリューション(深層ろ過式フィルタ「CJCフィルタ」、遠心分離式「アメロイドセパレータAS型」、アメロイド独自の除水方式「遠心ドライ装置MJ型」)について解説します。
深層ろ過方式(CJCフィルタ)
CJCフィルタはアメロイドを代表する深層ろ過方式のオフラインフィルタです。特殊高密度のフィルタエレメントを採用し、絶対ろ過精度3µmという非常に細かい粒子まで捕捉可能な超精密ろ過フィルタです。フィルタ内部まで異物を取り込む深層ろ過により表面だけでなく内部でも夾雑物をしっかり捕捉し、大量の汚れを蓄えられるため長寿命です。その結果、常にISO
16/14/11(NAS5級)相当の清浄度を維持でき、油圧作動油を新品級の清浄状態に保つことができます。
このフィルタは微細なゴミのろ過だけでなく、水分も特殊エレメントによって吸着除去できる点が大きな特徴です。オフライン循環方式のため、工作機械などの装置が稼働中でも停止中でもオイルタンク内の油を連続浄化でき、設備の運転を妨げません。
深層ろ過方式フィルタ
表面だけでなく内部でも夾雑物を捕捉するフィルタエレメントを採用。
ろ過精度が高く、微細な異物除去に最適。
油や水溶液の浄化。
(作動油、水グリ、潤滑油、洗浄油、防錆油、絶縁油、真空ポンプ油、廃油、洗浄液、メッキ液など)
遠心分離方式(アメロイドセパレータ AS型)
アメロイドセパレータ
AS型は、30年以上の実績を誇る遠心分離機です。毎分4,000回転の強力な遠心力で内部のボウル(回転分離部)を高速回転させることで、液体中に混入した固形分(スラッジ)を分離します。分離されたスラッジはボウル内壁に固着・圧縮されて固形化し、自動制御または手動で排出されます。
遠心分離方式は、フィルタでは処理しきれない汚れの多い液体や、大流量処理が必要な場面に最適です。
中速遠心分離
水・油・あらゆる液体に対応。
スラッジを固形化して自動排出。
フィルタでは対応しきれない汚れの激しい液体に最適。
油性、水溶性問わず様々な液体からのスラッジ除去。
アメロイド独自の除水方式(遠心ドライ装置 MJ型)
遠心ドライ装置
MJ型は、アメロイドが独自に開発した除水機能「ドライ方式」と遠心分離機構を組み合わせた、他に類を見ない高性能な油用浄化装置です。油に混ざり込んだ水分を高効率で除去するとともに、油中の微細な固形分(スラッジ)も同時に分離します。これらの処理により、油は透明感を取り戻し、新油同等の清浄度へと甦ります。
水が大量に混入して白濁(エマルション化)した油や、オイルクーラーの破損などにより大量の水が混入してしまった油の処理、遊離水を自動回収したい場合などに最適な装置です。
ドライ方式
油に混ざり込んだ水を除去しエマルションを解消。遊離水を自動回収。
スラッジを固形化して自動排出。
油(潤滑油、洗浄油、防錆油、油圧作動油など)からの油水分離とスラッジ除去。
廃油再生。
製品導入までの流れとサポート体制

アメロイドでは、お客様が安心して自社の廃油処理ソリューションを導入できるよう、問い合わせからアフターサポートまで一貫した支援体制を整えています。
- 1. お問い合わせ
- 課題が漠然としていても問題ございません。経験豊富な専門スタッフが丁寧にご相談に対応します。
- 2. 現場ヒアリング・調査
- 専門スタッフがお客様の施設を訪問し、詳しいヒアリングと現場調査を行います。
- 3. 提案・装置選定
- 調査結果をもとに、アメロイドの豊富な製品群(フィルタ・遠心分離機・油水分離機・排水処理装置など)から最適な装置やシステム構成を選定し提案します。
- 4. 効果確認(デモテスト)
- 提案内容に興味はあるが本当に効果が出るか不安というお客様のために、アメロイドではデモテストや現場への実機持ち込みテストにも対応しています。
- 5. 契約・設計・設置
- デモ等で効果を確認し導入の意思決定をしたら正式契約となります。お客様の設備条件やデモ結果を踏まえて最終仕様を確定後、アメロイドの技術スタッフが液体浄化システム全体を詳細設計します。
- 6. 運用・アフターフォロー
- 装置導入後も、アメロイドは充実したアフターサポートをご提供しています。液体浄化装置を長く安全に使い続けるには定期点検や消耗部品交換が欠かせませんが、アメロイドではメンテナンス契約プランをご用意しており、専門の技術スタッフによる計画保全が受けられます。
廃油処理に関するご相談はアメロイドにお問い合わせください

株式会社アメロイド(AMEROID)は1959年創業の液体浄化装置専門メーカーであり、産業現場で発生する廃油処理の課題解決に特化した多彩なソリューションをご提供しています。
創業以来累計20万台以上の装置を導入した実績があり、フィルタ、遠心分離機、油水分離機、排水処理装置、切粉脱水システムなど60種類以上の製品ラインアップを有しています。
これらの装置を組み合わせて工場のあらゆる汚液を浄化して継続使用を可能にし、環境保全・コスト削減・法令遵守に貢献することが同社の使命です。
アメロイドは1959年に創業した液体浄化装置の専門メーカーです。液体の浄化に特化した最高水準の製品を60種類以上取り揃え、お客様の課題に合った最適な装置を選定しご提案いたします。
資料セット無料ダウンロード
液体洗浄に関する資料を無料で
ダウンロードいただけます。

- フィルタ:用途に適したフィルタをお選びいただけます。
- 遠心分離機:用途に適した回転速度をお選びいただけます。
- 油水分離機:様々な形式の油水分離機を用意しております。
廃油処理に関するよくあるご質問
廃油処理に関してよくある質問や基本情報をまとめました。
お問い合わせ
ご質問やご要望などお気軽にご相談ください。
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