工場内で発生する匂いの原因とは?切削油(クーラント)による悪臭の対策方法を解説! | 株式会社アメロイド

工場内で発生する匂いの原因とは?切削油(クーラント)による悪臭の対策方法を解説!

2023年06月22日

工場で発生する臭気にはさまざまな原因があります。また、工場の種類によっても臭いの原因が異なってきます。

今回の記事では、工場の悪臭問題のなかでも金属加工工場などの切削加工の現場で発生する、切削油による悪臭問題について、その発生の原因・メカニズムや悪臭を防止するための対策について解説します。

切削油による工場の臭い問題・対策

金属素材を切削加工する際に加工精度向上を目的に用いられるのが切削油です。切削油は「クーラント」や「クーラント液」と呼ばれ、諸説ありますが「クール(冷却作用)」と「ルブリカント(潤滑作用)」を合わせた造語とされています。金属に刃をあてながら削ると熱が出ますので、一般的にはこの「冷却作用」と「潤滑作用」を持ったクーラントを掛けながら切削します。この切削油によって発生する工場の悪臭問題やその対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

水溶性切削油(水溶性クーラント)の腐敗による悪臭

切削油には、希釈せずに使用する不水溶性切削油と、水で希釈して使用する水溶性切削油の2種類があります。不水溶性切削油は腐敗しにくく潤滑性に優れるものの、引火性があるため火災の危険性が伴います。一方、水溶性切削油は引火点がなく冷却性に優れていますが、腐敗性があり悪臭の原因となります。

梅雨から秋口にかけて気温が上昇すると切削油の腐敗が起こりやすくなり、職場に悪臭が発生するのです。

切削油の腐敗が及ぼす従業員への悪影響

切削油の腐敗により悪臭が発生すると、服や体に臭いがつき、職場を離れても臭いに悩まされる場合があります。また、仕事に集中できなくなったり、吐き気などの体調不良を引き起こしたりといった場合もあります。このような労働環境で長期的に働き続けるとなると、従業員の健康への悪影響が懸念されます。

切削液が腐敗するメカニズムとは?

どのような仕組みで切削油が腐敗し悪臭が発生するのでしょうか。その原因やメカニズムを見ていきましょう。

切削油の腐敗の原因は「微生物」

水溶性切削油は通常、2~10%程度の濃度に水で希釈して使用します。水は長期間放置しておくといずれ腐敗してしまいます。これは消毒作用のある塩素が抜け、微生物が水中に含まれる有機物を栄養源として増殖するためです。微生物は希釈用の水だけでなく、空気中や従業員の衣服・身体、各種添加物など、あらゆるところに存在しています。これらの微生物が切削油にたどり着き、その中で増殖することで腐敗が進んでしまうのです。

微生物が増殖するメカニズムは?

微生物には生育に空気(酸素)を必要とする「好気性細菌」と、空気(酸素)を必要としない「嫌気性細菌」があります。

初めに活性化するのは好気性細菌だと言われています。好気性細菌は水溶性切削油の希釈水に含まれるミネラル成分や油剤成分などを栄養源として活発に増殖します。

好気性細菌が増殖し切削油が酸欠状態になったり、浮上油でタンク表面が覆われ空気が遮断されたりすると、今度は嫌気性細菌が好気性細菌の生成した糖やタンパク質を栄養源に増殖していきます。

この嫌気性細菌が増殖する過程で硫化水素などの硫黄系化合物が含まれるため、悪臭が発生するのです。

微生物が増殖しやすい条件とは?

微生物が育つためには、温度、水分、栄養の3つの条件があります。これらの条件が揃うことで微生物が増殖しやすくなります。

①温度

微生物が増殖しやすい温度は30~40℃です。これより低温であれば、微生物の活動が弱まり、高温になると死滅します。夏場は水温が上昇し、微生物が増殖しやすい温度条件となってしまいます。

②水分

微生物は乾燥した状態では死滅するか、生き延びたとしても増殖はできません。水分の存在は微生物が増殖する際に重要な要素です。水溶性切削油の主成分は水のため、微生物が育成する条件に当てはまります

③栄養

希釈水に含まれるミネラル成分や水溶性切削油に含まれる鉱油や油脂、界面活性剤などの油剤、添加剤が微生物の栄養源となります。この他にも、切削油タンクには前工程の油や潤滑油、作動油などの他油が持ち込まれます。また、タンクに混入した切粉などの金属成分が水溶性切削油と反応して汚泥が発生することもあります。これらが微生物の栄養源となり、増殖を助けることになります。

切削油の腐敗による工場の臭いの防止対策

水溶性切削油の腐敗による工場に発生する悪臭を防止するためには、以下のような対策を行なう必要があります。

適切な切削油管理

次にあげる水溶性切削油の「外観」「pH」「切削油タンクの浄化」の3点について、適切な管理を行ない、腐敗・劣化が進まないようにします。

外観

切削油は腐敗や劣化が進むと茶色に変色してくるので、見た目の色に変化がないか日常的に観察し、変化が出てきたら液を交換する。

pH

一般的に水溶性切削油はpH8~10の弱アルカリ性だが、微生物が増殖し腐敗が進むと酸性に近づきpH値が低下する。pH値をアルカリ性に保つと微生物の増殖を抑制できる

切削油タンクの浄化

微生物の栄養源となるタンク内の浮上油や切粉、研削スラッジを常時回収する。

混入油や切粉を除去する

水溶性切削油に他の油や切粉などが混入することは微生物が増殖し、腐敗の原因となります。腐敗が進むと悪臭の原因となるだけでなく、本来の切削性能が低下してしまいます。そうなると加工品に影響を及ぼすため、新油への全交換を余儀なくされ、設備停止や廃液量の増加へとつながってしまいます。

悪臭の抑制や加工精度低下を回避するためには混入する油や切粉などを日常的に取り除くことが重要です。

弊社では浮上油回収装置のみならず、クーラントに混ざり込んだ油の回収装置、切粉や研削スラッジの回収装置など、状況に合わせた様々な液体浄化装置を取り揃えており、装置の導入により悪臭対策や加工精度を高く維持することができます。

アメロイドの装置を導入した事例

【遠心脱油機 UB型】を導入した事例

導入前の課題

アルミ加工メーカーのお客様はクーラントの汚れに起因した切削工具の磨耗が酷いとお悩みでした。このため、年1~2回のペースで新しいクーラント液に入替えを行なっており、新油購入や廃棄の費用に加え、保全マンパワーの削減が課題となっていました。

改善施策

クーラントには油分とアルミの細かな粉末状の切粉が連続的に混入していました。フィルタではすぐ目詰まりしてしまうため、油分と固形物を同時に分離除去可能な「遠心脱油機UB型」をご提案しました。

施策結果

「UB型」を導入し、油分とゴミを連続的に回収することができ、クーラントの入替えは3年に1回に激減。新油購入費用や廃棄処分費用、工具交換費用の削減やマンパワーの削減につながりました。

また、悪臭の軽減という思わぬ効果も得られました。これは、「UB型」が悪臭の原因であるバクテリアの栄養源となる油分とスラッジを常時回収しバクテリアの繁殖を抑制することができたためです。

商品の詳細については、以下をご覧ください。

商品についての詳しい説明はこちら

【クーラントタンク清掃用 真空遠心掃除機 GH9V型】を導入した事例

導入前の課題

B社様では工作機械のクーラントタンクに切粉が堆積しスカム(汚泥)が発生していました。このため、クーラント液の性能低下や、バクテリア(微生物)の影響による悪臭が発生していました。

また、タンク清掃や更液作業も負担が大きい状態でした。

改善施策

クーラント液の定期更液時のタンク清掃ではなく、日々手軽に清掃でき、クーラント液をキレイな状態に維持する方法をご提案。

「クーラントタンク清掃用 真空遠心掃除機 GH9V型」は掃除機のように専用ノズルでタンクの隅々まで掃除できます。タンク底に堆積している切粉や研削スラッジを真空装置でグングン吸い込み、遠心力で細かなスラッジまで全て分離、回収します。回収されたスラッジは脱水され簡単に取り出せます。フィルタなどの消耗品が必要ないうえに細かいスラッジまで回収できます。

施策結果

「GH9V型」はキャスター付きで移動も簡単なため、日々手軽に清掃ができ、タンク清掃と更液の回数が年12回から年3回に激減。更液コストを大幅に削減することができました。

微生物のバクテリア(微生物)の栄養源が断たれたことでクーラントの腐敗、ひいては悪臭の問題も解消しました。

また、クーラント液をキレイな状態に維持することができたことで加工精度も安定しました。

事例の詳細については、以下のページをご覧ください。

導入事例:クーラントタンク清掃用 真空遠心掃除機 GH9V型

商品の詳細については、以下をご覧ください。

商品についての詳しい説明はこちら

まとめ

工場で発生する臭気のなかでも金属加工工場などの切削加工の現場で発生する切削油による悪臭問題について、そのメカニズムも交えて紹介しました。

工場内の悪臭は、切削油に微生物が増殖して発生することが大きな原因として考えられますので、微生物が増殖しないような環境を作ってあげることが、工場の労働環境を向上させる第一歩です。

そのためには、切削油に対して日常的に適切な管理を行ない、腐敗・劣化が進まないようにしておくほか、浄化装置の設置を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社では浮上油回収はもちろん、クーラントに混ざり込んだ油の回収、比重や大きさの大小に合わせたスラッジ回収など、状況に合わせて選べる様々な液体浄化装置を取り揃えておりますので、遠慮なくお問い合わせください。
お客様の工場に伺い臭気センサーで臭いを数値化したり、クーラントの状態や混入するスラッジなどを確認したりといったプロセスを経ながらお打合せの上、労働環境改善に向けた最適な浄化装置をご提案させていただきます。

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