【保全担当者必見】潤滑油管理~油の選定の4つのポイント~ | 株式会社アメロイド

【保全担当者必見】潤滑油管理~油の選定の4つのポイント~

2024年03月29日

設備の保守、メンテナンスは、その効率と寿命を最大化するために非常に重要です。その中でも、油の選定は設備の性能に大きく影響を与える要素の一つです。適切な油を選定し、適切に運用、管理していくことで、設備の安定稼働や生産性の向上、コスト削減、そして環境への配慮など、多方面で利益をもたらします。
製造現場において油管理は欠かすことのできない工程ですが、現場での油管理は苦労が多いのが実情ではないでしょうか。

油管理において苦労するポイント
適切な油の検討
設備に合わせて最適な油を選ぶ必要があり、これが間違っていると設備の寿命短縮や故障の原因となってしまう。
油交換のタイミング
頻繁に交換するとコストが上がるが、劣化が進んだ状態で使用し続けると設備の寿命が縮むなど悪影響があり、交換時期の判断が難しい。
油の性状管理
使用中の油の劣化や汚染状況を定期的にチェックし、問題があれば迅速な対応が求められる。
廃油の処理
廃棄処理のコストや環境保全の面から処理量を減らしたい。

こういった現場での苦労を解消するため、本コラムではお役に立つ情報をご提供してまいります。今回は第一弾として油管理の中でも油の選定に焦点を当てお話ししていきたいと思います。

 

適油の選定4つのポイント

適切な油を選定することは、設備の寿命を延ばし、運用効率を最大化する上で不可欠です。 油を選定する際、まず候補に挙がるのは機械メーカーが推奨する油です。しかし、複数の設備を保有している場合、推奨油をそのまま使っていては種類が増え管理が大変です。すでに自社で使用している油が流用できるならそれに越したことはありません。 では、その油が適用するのかどのように判断すればよいのでしょうか。次の4項目について推奨油の仕様と比較してみましょう。

  • 1潤滑油の種類
  • 2基油(ベースオイル)と添加剤
  • 3粘度
  • 4コストパフォーマンス

1.潤滑油の種類と役割

潤滑油は様々な種類が存在し、それぞれに特長が異なります。役割や機能、特長を理解して最適な潤滑油を選択しましょう。

 

潤滑油が果たす6つの役割

まず、潤滑油を使用する目的、役割を整理します。

  • 摩擦の低減:膜を形成することで直接的な金属同士の接触を防ぎ、摩擦を低減します
  • 磨耗の防止:摩擦を減少させることにより、部品の摩耗も同時に減少します
  • 冷却:摩擦によって発熱する熱を吸収し、過度な加熱を防ぐ役割を果たします
  • 防錆:金属の表面を保護し、錆や腐食から守ります
  • シール効果:液体やガス、異物などの漏れや侵入を防ぐシール効果があります
  • 洗浄:不純物や汚れを落とし、洗い流します

これらの役割は全ての潤滑油で同じという訳ではありません。用途や動作環境によって異なりますので、何に使用するか、どのような役割を必要とするか整理しておきましょう。

工業用潤滑油の種類

工業用潤滑油は使い道で分けると次のような種類があります。目的に応じたものを使用しましょう。

  • 設備で使用するもの
    油圧作動油・タービン油・ギア油・軸受油・真空ポンプ油・圧縮機油・冷凍機油・摺動面油 など
  • 金属加工で使用するもの
    切削油・圧延油・プレス油・熱処理油・防錆油 など

2.基油(ベースオイル)と添加剤

潤滑油は基油(ベースオイル)と添加剤から成り立っています。使用目的に応じて様々な組み合わせのものが存在しますので、推奨油と同じ調合の油を選ぶことが重要です。

 

基油(ベースオイル)の種類

潤滑油は鉱物油、合成油、植物油など、基油には様々な種類があります。
合成油は一般的に高温や厳しい化学的条件下での使用に適しているなど、基油の種類によって特性が大きく異なります。

添加剤の種類と役割

添加剤は潤滑油の用途や作動環境に応じて、ベースオイルの性能を強化、改善、または特定の機能を付与する目的で加えられます。どのような添加剤が含まれているのか把握しておきましょう。

  • 酸化防止剤:オイルの酸化を遅らせ劣化を防ぎます
  • 消泡剤:潤滑油中の気泡の形成を抑制し、泡立ちを減らすことで潤滑性の低下を防ぎます
  • 防錆剤・防食剤:金属表面に保護膜を形成し、水やその他の腐食性物質による錆や腐食を防ぎます
  • 極圧剤:高負荷条件下での金属部品の摩耗や焼き付きを防ぎます
  • 摩耗防止剤:摩擦による摩耗を防ぐために金属部品の表面に保護膜を形成します
  • 油性剤:金属表面に強固な吸着膜を形成し摩擦を低減します
  • 粘度指数向上剤:温度変化による粘度の変動を縮小し、より広い温度範囲で使用できるようになります
  • 流動点降下剤:低温でも油が固まらないよう流動性をよくします
  • 抗乳化剤:油と水を分離しやすくし乳化を防ぎます
【添加剤の使用例】
添加剤 油の種類 酸化防止剤 消泡剤 防錆剤 極圧剤 磨耗防止剤 油性剤 粘度指数
向上剤
流動点
降下剤
抗乳化剤
油圧作動油
タービン油
ギア油
軸受油
圧縮機油
冷凍機油
摺動面油

○=通常添加されるもの △=場合により添加されるもの の意です。

3.潤滑油の粘度

潤滑油の選定で重要なのが粘度です。粘度は流体の流れやすさを表し、潤滑油の流動性や潤滑性に直接かかわります。

 

粘度の規格

工業用潤滑油の粘度分類はISO粘度分類の規格が広く使用されています。ISO粘度分類は40℃における潤滑油の動粘度で規定されており、単位は(mm²/s)で表します。
粘度のグレードは「ISO VG46」のように表され、VGの後の数字が大きい方が粘度が高く、小さい方が粘度が低い油となります。

選定時の注意点

潤滑油は機械が設計された条件に基づいて選定しなければ、性能が低下したり故障の原因になることがありますので、機械メーカーは通常、「ISO VG**」のように推奨する潤滑油の粘度を指定します。まず、機械メーカーの推奨する粘度規格を確認しましょう。

また、粘度を選定する際、次の項目にも注意が必要です。

運転温度
潤滑油は温度が上昇すると粘度が低下し、温度が低下すると粘度が上昇します。動作環境での最高温度と最低温度を考慮し、それらの条件下で適切な粘度を踏まえて選択する必要があります。
粘度指数
粘度指数は温度変化に対する粘度の変動を示します。粘度指数が高い潤滑油は温度変化に対して粘度が安定していることを示します。機械が様々な温度で動作する場合、粘度指数が高い潤滑油が推奨されます。
負荷と速度
粘度が高いと油膜は厚くなりますが、その分抵抗は大きくなり、発熱したり動力損失が大きくなります。粘度が低いと抵抗は小さいですが、油膜が薄くなり潤滑性が落ち、異常摩耗や焼き付きの原因となります。 一般的に機械の動作が高負荷または低速の条件では、より高粘度の潤滑油。逆に、高速または低負荷の場合は、低粘度の潤滑油が適しています。

4.コストパフォーマンス

油を選定する際、品質はもちろんですが、コストも切り離せないポイントです。
潤滑油の価格だけでなく、その性能が維持される期間や交換頻度、機械や設備の保守費用なども考慮して検討しましょう。

まとめ

このように、最適な油の検討には、複数の要素を考慮する必要があります。現場の専門的な知識、経験が必要となるため、油メーカーや販売店など専門家の意見を取り入れ検討されるとよいでしょう。

次回予告
次回の記事では、油が劣化する原因と状態把握のために大切な「日常点検」について掘り下げてお伝えいたします。最新技術を活用した油の状態監視の手法もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
続きの記事はこちら⇒【保全担当者必見】潤滑油管理~日常点検で見るべき6つのポイント~